COVID-19の影響およびデビッド・ラガナ副社長辞任により独自の活動を停止していたNWAは2021年3月21日、約1年2ヶ月ぶりのPPVを開催。2日後放送の『NWA Powerrr』では、ロイス・アイザックス離脱により、オルディス、ラティマー、カミールの3人になった『ストリクトリー・ビジネス』とクリス・アドニス(元WWEのクリス・マスターズ)が共闘。6人タッグマッチでアロン・スティーブンス & クレイトスの世界タッグ王者組に世界テレビ王者ザ・ポープ(イライジャ・バーク)を加えた3人に勝利。
3月30日放送分の『NWA Powerrr』は世界ヘビー級王者ニック・オルディスのインタビューで始まった。「アドニスはストリクトリー・ビジネスの新メンバーか」という質問に、「ちょっと一緒に戦って勝ったからといって、すぐ加入とはならない。」と答えると、PPVでアドニスを破りナショナル王座を防衛したにも関わらず、試合後アドニスに攻撃され「1週間欠場」を余儀なくされたトレバー・マードックが登場、アドニスとの決着戦を要求した。
オルディスがマードックに対し、「普通なら、俺の邪魔をすると1週間の欠場では済まない。だが俺達は全く違うタイプの選手であるにも関わらずただ1つだけ共通点がある。2人とも偉大なるハーリー・レイスの特訓を受けたということだ。俺達がハーリーから教わったプロレスの基本ってのを覚えてるか? 『敵に背を向けるな。』ってことだ。」と言った直後、アドニスが背後からマードックを攻撃。
前世界女子王者サンダー・ロサは、2019年頭から2ヶ月にわたり日本に滞在しスターダムに参戦したアレックス・ガルシアと組み、NWA初登場のスカイ・ブルーとジェナサイド(2019年5月にSEAdLINNNG大阪大会に参戦したジェナ・ヴァン・マッスル)に反則勝ち。
反則およびリングアウト負けなしで行われたナショナル選手権試合では、アドニスが、首を負傷していたマードックから王座を強奪。
4月6日の放送では、ザ・ポープがNJPWストロングで活躍中のフレッド・ロッサ―(元WWEのダレン・ヤング)を破り世界テレビ王座を防衛。
仲間割れが予想されている世界タッグ王者組のアロン・スティーブンスとクレイトスは、4月20日の放送のノンタイトル戦で、ミステリーパートナーを用意したと主張するサル・リナウロと対戦。ジョセフ・ハドソンの他界以来、ベビーフェース転向かと思わせるような行動を続けるスティーブンスが、場外でもリナウロへの攻撃を見せるクレイトスに不満げな態度を示す。放送席の机にリナウロの頭をぶつけ、リング内に連れ戻し攻撃を続けるクレイトスに対し、解説を務めていた元世界ヘビー級王者ティム・ストームは放送席を去りリングに上がる。最後は、パートナーによる容赦ない攻撃を止めようとしたスティーブンスにクレイトスが襲い掛かろうとしたところ、スティーブンスがよけ、ストームがクレイトスを攻撃し、リナウロがフォール勝ちを収めた。
世界テレビ王座挑戦者決定3ウェイ戦では、タイラス(元WWEのブローダス・クレイ)がマット・クロスとマルシェ・ロケットに勝利。
NWAは4月23日、PPV『When Our Shadows Fall』を6月6日に開催することを発表。
4月27日放送分の冒頭でオルディスがインタビューを受けている最中、またもやマードックが登場し、ナショナル王座を奪われたのはオルディスの責任だと詰め寄る。オルディスは6人タッグで、トム・ラティマーとクリス・アドニスにミステリーパートナーを加えた3人相手に勝ったらナショナル王座再戦を約束。
続いてクレイトスとサル・リナウロの試合がノーコンテストに終わると、例によってクレイトスは試合後も攻撃を続ける。タッグパートナーのアロン・スティーブンスがリングに入り止めようとすると、クレイトスはリングを降り実況席のテーブルを叩きながら、ティム・ストームに前週の試合のように殴れるか煽り始める。そこにラティマーとアドニスが現れ、6人タッグ戦のパートナーとしてクレイトスを指名。
世界テレビ王座戦は、王者ポープとタイラスが(番組開始の午後6:05にちなんだ)6分5秒時間切れ引き分けに終わる。
6人タッグ戦では、ラティマーとアドニス、クレイトスの相手としてマードック、ストーム、そしてクレイトスのパートナーであるスティーブンスが登場。アドニスがストームをフォールするが、クレイトスとスティーブンスの対戦はなかった。
5月11日のメインイベントでは、スティーブンスとクレイトスにラティマーとアドニスが挑戦する世界タッグ王座戦が予定されていた。だが、翌週予定されている世界ヘビー級王座挑戦者決定バトルロイヤルに、いかなる王座を保持する選手も出場できないというビリー・コーガン社長からの発表を聞いたオルディスは、タッグ王座戦のボイコットを宣言。
世界テレビ王座挑戦者決定戦ではマット・クロスがマシュー・ミムスに勝利。クレイトスは2分5秒でサル・リナウロに勝利。
試合後メリーナを連れたサンダー・ロサと、タリン・テレルを連れたカミールがインタビューに登場。前回のPPVで世界女子王座挑戦者決定戦に負けたロサがカミールに再戦を要求するが、カミールはロサがAEWなどのNWA以外の団体にも出場していることを指摘し、もし負けたらNWAのみに専念するという条件でロサとの対戦に同意。
マット・クロスは5月18日の放送で世界テレビ王者ポープに挑戦するが、5分7秒で敗れる。
スティーブンス & クレイトスはノンタイトル戦でフレッド・ロッサ― & マルシェ・ロケットと対戦。スティーブンスとロケットがリング内で試合を続けていると、クレイトスは場外に降り、相手側コーナーの下からロッサ―を攻撃。「何をやってるんだ?」と不満そうに叫ぶスティーブンスに、「いいからさっさと終わらせろ。」と返すクレイトス。スティーブンスがロケットをフォールするが、緊張感の続く世界タッグ王者組だった。
メインイベントではタッグ王座挑戦者決定戦で、ウォー・キングス (クリムゾン & 元世界ヘビー級王者ジャックス・デイン) がジ・エンド (オディンソン & パロウ)に勝利。
5月25日の放送では、前週挑戦者決定戦に勝利したウォー・キングスが王者組スティーブンス & クレイトスと対戦するが、何者かがリング下に現れクリムゾンを攻撃し、クレイトスがフォール。不仲が続く中でも王座防衛を果たした。
カミールとロサの間で行われた世界女子王座挑戦者決定戦は20分時間切れ引き分け。よって、カミールが挑戦権を維持し、ロサもNWA以外の団体に引き続き出場できることになった。
14人参加世界ヘビー級王座決定バトルロイヤルには、トレバー・マードックの優勝を妨げるという目的からか、トム・ラティマーとクリス・アドニスも出場。現役王者は出場できないというルールのもと、アドニスの保持するナショナル王座は空位となった。案の定、最終的にはマードックがラティマーとアドニスを破りバトルロイヤルに優勝、オルディスへの挑戦権を得て、ハーリー・レイスの弟子同士による選手権試合が決定。
カミールの挑戦が決定となった世界女子王者セレナ・ディーブは5月30日、フロリダ州ジャクソンビルで行われたAEWのPPV『Double or Nothing』で里歩を相手に王座防衛。
そして6月6日、PPV『When Our Shadows Fall』が開催。米国ではCOVID-19ワクチン接種者が増え、コロナ禍が緩和する中、制限付きで観客の入場も認められた。
試合結果 (左側が勝者、最初の4試合はYouTubeで無料放送):
- 世界テレビ王座挑戦者決定戦: ルーク・ホークス (7:40) ジェレマイア・プランケット
- ※ プランケットは、ブルース・サープ時代のNWAで南部ヘビー級、タッグ、テレビ、およびオーストラリア王座を奪取。
- ジェナサイド (3:44) スカイ・ブルー
- 3ウェイ戦: コルビー・コリノ (3:25) キャプテン・ユマ [ジョニー・ユマ]、P・J・ホークス
- 4ウェイ戦: ベスティア666 & メカ・ウルフ (8:45) マルシェ・ロケット & スライス・ブギ、サル・リナウロ & ルード [サム・アドニス]、ジ・エンド [オディンソン & パロウ]
- ノンタイトル戦: タイラス (10:26) ザ・ポープ
- タリン・テレル & カイリー・レイ (8:53) サンダー・ロサ & メリーナ
- JTG (9:29) フレッド・ロッサ―
- 世界タッグ選手権3ウェイ戦: アロン・スティーブンス & クレイトス (14:10) ストリクトリー・ビジネス [トム・ラティマー & クリス・アドニス]、ウォー・キングス [ジャックス・デイン & クリムゾン]
- ※ 王座防衛。クリムゾンに顔を蹴られたスティーブンスが倒れている隙に、クレイトスがクリムゾンを急所攻撃し、それを見ていなかったスティーブンスがクリムゾンをフォール。
- 世界女子選手権: カミール (14:18) セレナ・ディーブ
- ※ 王座移動。
- 世界ヘビー級選手権: ニック・オルディス (12:52 反則勝ち) トレバー・マードック
- ※ 王座防衛。椅子を持って現れたトム・ラティマーに中止しているレフリーを、背後からオルディスが椅子攻撃、その後オルディスにテキサス・クローバー・ホールドをかけているマードックが椅子を使ったと判断。
2日後の6月8日放送の『NWA Powerrr』の冒頭では、通常のテーマ曲ではなく、ビリー・コーガンNWA社長と、先日WWEを解雇されたばかりの元WWEおよびTNA女子王者のミッキー・ジェームスが登場。
コーガン社長は8月28日から31日の4日間にかけて、PPVおよび『NWA Powerrr』収録を開催することを発表。会場は通常のジョージア州アトランタにあるGPBスタジオではなく、なんとNWA縁の地ミズーリ州セントルイスのチェイス・パーク・プラザ・ホテルだ。チェイスといえば、長年NWA会長を務めたサム・マソニックのお膝元であるセントルイス地区のテレビ中継が1953年から1983年まで30年間行われた場所で、約38年ぶりに同会場にNWAブランドが復帰することになる。
更に、28日は女子選手のみでの大会、29日にはNWA創立73周年記念大会と、2日続けてのPPV開催となる。オルディス夫人であることからNWA参戦が予想されていたジェームスは、選手としての参戦ではなく、女子大会のプロデューサーを務める。現在サンダー・ロサがテキサスでミッション・プロレスリング(MPW)という女子団体を運営していることから、女子のみでの大会も不可能ではない。もちろん30日と31日は『NWA Powerrr』の収録だ。
プロデューサーという立場だけに収まるとは思えないミッキー・ジェームスの動向は?
2日連続のPPVは成功するのか?
空位となったナショナル王座を勝ち取るのは?
世界タッグ王者組アロン・スティーブンスとクレイトスの関係は?
不明慮な判定で王座奪取を逃したトレバー・マードックと世界ヘビー級王者ニック・オルディスの再戦は?
まだまだ目が離せないNWAなのである。