NWAは、年が明けてまだ間もない2019年1月2日、年内開催予定のタッグトーナメント『クロケット・カップ』が、クロケット財団だけではなく、ROHとの3団体共催になることを発表。
1月5日のNWAテネシー州クラークスビル大会で行われた出場者決定戦では、ウォー・キングス(ジャックス・デイン & クリムゾン)がカレブ・コンレー & ジェイ・ブラッドリーを破り早くも出場決定権をもぎ取り、1月26日のROHテキサス州サンアントニオ大会でも、ダラス、ヒューストンと同州内で3日間に亘り開催された出場者決定トーナメントの決勝戦が行われ、ヴィラン・エンタープライズ (ブロディ・キング & PCO)がジュース・ロビンソン & デビッド・フィンレーを破った。2月8日には、ROHと提携する新日本プロレスとCMLLからも同トーナメントへの参加が発表された。
世界ヘビー級王者ニック・オルディスは、2019年2月9日にフロリダ州レイクランドで行われたROHのテレビ撮りで、長年の親友マーティ・スカルに、クロケット・カップでのパートナーになるよう依頼。だが、スカルは逆に、同大会でのオルディスの世界王座への挑戦を表明。
ちなみに、ブルース・サープ時代のNWAとラインセンス契約を交わし、現在IPW:UKを運営するイギリスのビリー・ウッドが、サープ社長に世界ジュニアヘビー級王者候補として推薦していたのもスカルだった。
オルディスはその後、2月23日にオハイオ州でシェーン・ストリックランド、3月9日ミズーリ州で元NWA世界王者ハーリー・レイスの息子リーランド・レイス、そして3月31日にはニューハンプシャー州初のNWA世界王座戦でトミー・マックを相手に防衛。また、4月14日には、ROHのオハイオ州コロンバス大会で、共にテレビ解説を務めていた元王者コルト・カバナと放送席で口論になり、なんと同大会中に急遽選手権試合が組まれ、反則負けにより辛うじて王座転落を逃れた。
4月9日、トーナメントの組合せが発表。既に参加が決定していたヴィラン・エンタープライズは新日代表の永田裕志 & 小島聡と、ウォー・キングスの相手は当日行われるタッグバトルロイヤルの優勝者組との対戦が発表。CMLL代表のゲレロ・マヤ・ジュニア & ストゥーカ・ジュニアの相手は、ROHのバンディ―ド & フリップ・ゴードンとなったが、皮肉なことにストゥーカは現在、NWA世界ライトヘビー級王座の流れを継ぐNWA世界ヒストリック・ライトヘビー級王座を保持。そして、なんと元世界タッグ王者組ロックンロール・エクスプレス(リッキー・モートン & ロバート・ギブソン)がROHのブリスコ兄弟と対戦することも発表された。他にもオルディスとスカルの世界ヘビー級戦に加え、ウィリー・マックのナショナル王座戦、ジャズの世界女子王座戦も決定。
だが、試合を5日後に控えた4月22日、同大会にてインパクト・レスリングでシエナとして活躍するアリシン・ケイを相手に王座を防衛する予定だったジャズが、「医療的および個人的な事情」を理由に返上。2016年9月に同王座を奪取以来、回数こそは少なかったが、西はロサンゼルスから東はニューヨークまで、全米各地のみならず、カナダのトロント、そして東京でも防衛を続け長期政権を築き上げた王者の突如の発表には多くのファンが驚いた。
翌日、空位となった世界女子王座が、ジャズに挑戦予定だったアリシン・ケイと、元王者サンタナ・ギャレットの間で争われることが決定。特別立会人は元AWAおよびWWF世界王者メドーゥーサだ。
クロケット・カップの前日、1月大会で行われた髪切りマッチでデビッド・アークエット & ティム・ストームに負け、長髪と髭をきれいさっぱり剃られたNWAの名物男(?)ジョセファスが同試合以来久々に登場。「(丸刈りになることにより)今や『鎖』が解き放され、全てのことから解放された。王国にこの機会をもたらせてくれた諸君に感謝したい。デビッド・アークエットよ、君のことを愛している。ティモシー・ストームよ、君は僕のチャンピオンだ。これまでの流れの全てを予言していたスピリチャル・アドバイザーにも感謝している。そしてクロケット・カップこそが、我が王国の団結の時だ。」と、例によって不気味な発言を残した。
大会当日NWAは、トーナメント優勝者組に世界タッグ王座が授与されることを発表。優勝トロフィーと共に用意されていたベルトは、1970年代後半から1980年代前半にかけてミッドアトランティック地区で使われていた、ジン・アンダーソン & オレイ・アンダーソンやリッキー・スティムボート & ジェイ・ヤングブラッド、ロックンロール・エクスプレスらが巻いたものと同じデザインだった。
試合に先駆け、会場となったカバラス・アリーナでは午前中からファンフェストが開催され、世界王者ニック・オルディス、ナショナル王者ウィリー・マックといった現在活躍中の選手達だけではなく、ロックンロール・エクスプレス、ミッドナイト・エクスプレス (デニス・コンドレー、ボビー・イートン、スタン・レーン、ジム・コーネット)、マグナムTA、ニキタ・コロフといった、1980年代のジム・クロケット・プロモーションで大活躍した往年の選手達もサイン会などに参加。
試合結果(左側が勝者):
- クロケット・カップ出場者決定バトルロイヤル決勝: ロイス・アイザックス & トーマス・ラティマ― (6:40) ザ・ボーイズ
- クロケット・カップ1回戦: バンディ―ド & フリップ・ゴードン [ROH] (12:30) ゲレロ・マヤ・ジュニア & ストゥーカ・ジュニア [CMLL]
- クロケット・カップ1回戦: ロイス・アイザックス & トーマス・ラティマ― (7:50) ウォー・キングス: ジャックス・デイン & クリムゾン [NWA]
- クロケット・カップ1回戦: ジェイ・ブリスコ & マーク・ブリスコ [ROH] (6:55) ロックンロール・エクスプレス: リッキー・モートン & ロバート・ギブソン [NWA]
- クロケット・カップ1回戦: ヴィラン・エンタープライズ: ブロディ・キング & PCO [ROH] (11:50) 永田裕志 & 小島 聡 [新日]
- 世界女子王座決定戦: アリシン・ケイ (8:55) サンタナ・ギャレット
- クロケット・カップ準決勝: ロイス・アイザックス & トーマス・ラティマ― (7:15) バンディ―ド & フリップ・ゴードン
- クロケット・カップ準決勝: ヴィラン・エンタープライズ: ブロディ・キング & PCO (9:50 反則) ジェイ・ブリスコ & マーク・ブリスコ
- ナショナル選手権: コルト・カバナ (8:45) ウィリー・マック
※ 王座移動。 - 世界タッグ王座決定戦 (クロケット・カップ決勝): ヴィラン・エンタープライズ: ブロディ・キング & PCO (6:40) ロイス・アイザックス & トーマス・ラティマ―
- 世界ヘビー級選手権: ニック・オルディス (23:45) マーティ・スカル
※ 王座防衛。
前日になって参加を表明したジョセファスは、ジェイ・ブラッドリーと組み、バトルロイヤルに出場したがあっけなく敗退。
トーナメントに優勝した前ROH世界王者組ヴィラン・エンタープライズにベルトを授与したのはニキタ・コロフとマグナムTAだった。
数字だけを見ると、殆どの試合の時間が短いような感があるが、合間に往年の選手達のインタビューが入ったり、新日とCMLLのチームはいずれも1回戦敗退だったが、せっかくの『外客』の試合は他のトーナメント戦より長く、メインイベントだったオルディスとスカルの試合には特に十分に時間が取ってあり、バランスが取れて充実した大会だったというのが個人的な感想だ。
昨年、復活ナショナル王座を奪取し活躍中だったウィリー・マックが負けたのは予想外だったが、長年カリフォルニア州南部のプロレス情報を発信しているサイトによると、マックが契約しているルチャ・アンダーグラウンド(以下LU)と、その親団体の1つであるAAAが、ROHとNWAに対して、マックの起用を停止する通告を出したという説があるとのこと。これがきっかけで、マックとジェフ・コブを含む数名の選手達が、LUに契約解除を依頼しているのだという。もしマックがLU脱退となると、王座奪回を目指し新王者カバナに挑戦することが予想されるが、その一方で、今回の試合後にリング上で元TNA世界ヘビー級王者ジェームス・ストームもカバナに挑戦を表明している。
やや強引に新王者が誕生した感のあるナショナル王座と世界女子王座の動向は?
世界タッグ王座を奪取したROH常連組は、どこまでNWAで活躍するのか?
盟友スカルを相手に名勝負を展開した世界ヘビー級王者オルディスの、次なる挑戦者は?
ROHから大量に選手を引き抜いたAEWが旗揚げしようとしている今、NWAと、ROHが提携する新日やCMLLとの関係は?
丸刈りどころか、丸裸にまでなって『愛と団結』を唱えたジョセファスの今後は? (笑)
まだまだ目が離せないNWAなのである。