かつて、ミズーリ州セントルイスのサム・マソニックが会長としてNWAを牛耳っていた時代、同地でのテレビ収録はチェイス・パーク・プラザホテルで行われていた。今や同会場での2日興行が恒例となったNWA発足記念大会だが、75周年大会は8月26日と27日に開催。
7月11日放送の『NWA Powerrr』で、ナショナル・ヘビー級王者EC3がサイラス・メイソンを破り防衛した後、王座を返上し、タイラスの持つ世界ヘビー級王座に挑戦することを表明。『NWA75』PPV大会での対戦が決定。そのタイラスは7月27日、EC3に勝てなければ引退することを宣言。
7月25日放送分では、世界タッグ王者組ブラント・フォース・トラウマの片割れカーネージが、元世界ヘビー級王者ジャック・デインにリングアウト勝ち。解説を務めていたティム・ストームが、デインにかつての勢いがなくなっている可能性を指摘すると、試合後デインがストームに詰め寄る。2週間後の8月8日の放送では、ミムズ & ダック・ドレイパーがデイン & ブレイク・トゥループと対戦、トゥループがフォールをとられたため、試合後デインが不満を示し、トゥループを責める。デインはそのまま再び解説席のストームに詰め寄ったことから、ストームは『NWA75』でのデインとの対戦を要求した。なぜこの時期にストームが試合に復帰するのかこの時点では定かではなかったが…。
同じく8月8日放送分では、エラ・エンビーがミッサ・ケイトを破り世界女子タッグ王座挑戦権を得たため、『NWA75』での王者組ケイト & マディとエンビー & カイリー・ペイジの対戦が決定。
試合結果 (左側が勝者):
8月26日 (最初の4試合はYouTubeで無料配信)
- ロバート・アンソニー (5:40) ジェーク・ドゥマス
- USタッグ王座挑戦者決定戦: デイジー・キル & タロス (7:14) フィクサーズ [ジェイ・ブラッドリー & レッキングボール・ルガースキー]
- ザイオン (6:49) ジョーダン・クリアウォーター
- 世界ジュニアヘビー級王座挑戦者決定5人参加ジャンボリー: ジャック・カートウィール (6:27) アレックス・テイラー、コア・ラクサマナ、エリック・ジャクソン、マット・バイン
- 世界女子テレビ選手権: マックス・ザ・インペイラー (6:40) ケンジー・ペイジ
※ 王座移動。 - ナショナル・ヘビー級王座決定3ウェイ戦: サイラス・メイソン (9:14) クレイトス、オディンソン
- ノーDQ戦: ジョー・アロンゾ (10:02) ホミサイド
- ヤボ・ザ・クラウン & ルフォ・ザ・クラウン (6:14) ミムス & ダック・ドレイパー
- 世界ジュニアヘビー級選手権: コルビー・コリノ (12:09) ケリー・モートン
※ 王座移動。 - ノーDQ戦: ジャックス・デイン (3:09) ティム・ストーム
※ レフリーストップ。 - 世界女子王座挑戦者決定12人参加ガウントレット戦: ケンジー・ペイジ優勝 (15:14)
- マット・カルドナ (5:26) リッキー・モートン
- 世界タッグ選手権: ブラント・フォース・トラウマ [カーネージ & ダメージ] (9:16) ラ・レベリオン [ベスティア666 & メカ・ウルフ]
※ 王座移動。 - 世界女子選手権(ノーリミット戦): カミール (15:37) ナタリア・マルコバ
※ 王座防衛。
8月27日 (最初の3試合はYouTubeで無料配信)
- ナショナル・ヘビー級王座挑戦者決定23人参加バトルロイヤル: ジョーダン・クリアウォーター優勝 (15:56)
- ナタリア・マルコバ (6:03) テイラー・ライジング
- USタッグ選手権: デイジー・キル & タロス (7:34) カントリー・ジェントルメン [A・J・カザナ & アンソニー・アンドリュース]
※ 王座移動。 - 世界テレビ選手権: トム・ラティマー (9:57) クリス・アドニス
※ 王座防衛。 - 世界女子タッグ選手権: プリティー・エンパワード [エラ・エンビー & カイリー・ペイジ] (7:46) M95 [マディ & ミッサ・ケイト]
※ 王座移動。 - 世界ジュニアヘビー級選手権: コルビー・コリノ (10:24) ジャック・カートウィール
※ 王座防衛。 - 世界女子テレビ選手権: マックス・ザ・インペイラー (5:47) ルーシー・ジェイ
※ 王座防衛。 - ラ・レベリオン [ベスティア666 & メカ・ウルフ] (8:05) ヤボ・ザ・クラウン & ルフォ・ザ・クラウン
- ケリー・モートン (9:22) マット・カルドナ
- ナショナル・ヘビー級選手権: サイラス・メイソン (7:06) ジョーダン・クリアウォーター
※ 王座防衛。 - 世界タッグ選手権: ブラント・フォース・トラウマ [カーネージ & ダメージ] (11:41) トレバー・マードック & マイク・ノックス
※ 王座防衛。 - 世界女子選手権: ケンジー・ペイジ (13:04) カミール
※ 王座移動。 - 世界ヘビー級選手権: EC3 (17:21) タイラス
※ 王座移動。
初日には世界女子テレビ王座を巡って対戦したマックスとケンジーが世界女子王座挑戦者ガウントレット戦にも出場。テレビ王座から転落したばかりのケンジーが挑戦権をもぎ取り、翌日『一度っきりの王者』を主張してきたカミールの長期政権に終止符を打つと番狂わせとなった。本人のSNSでの投稿によると、実はカミールは、「既に王者としてやり尽くした」という理由で、2月頃からケンジーの王座奪取を提案していたという。
ナショナル王座挑戦者決定バトルロイヤルでは、緊張高まるジャックス・デインとタッグパートナーのブレイク・トゥループも出場。試合中、トゥループがデインを裏切りトップロープ越しに投げたため、仲間割れはほぼ決定的となった。
結果的に、トム・ラティマーの保持する世界テレビ王座以外の全てにおいて新王者誕生だという、新たな時代の幕開けとなる大会だった。予告どおりタイラスは引退を表明。また、ラティマーはこれでテレビ王座を7回防衛したため、同王座を返上すれば世界ヘビー級王座へ挑戦できる権利が自動的に与えられた。
久々のNWA参戦を果たした元世界ヘビー級王者マット・カルドナは、初日にリッキー・モートンを破ったものの、翌日は息子のケリーに敗れ、仇を討たれる結果となった。
また、ラ・レベリオンのセコンドにはバンピーロ、ヤボ & ルッフォのセコンドにはインセイン・クラウン・ポッシのヴァイオレント・Jがそれぞれ就いた。
ジャックス・デインに敗れたティム・ストームが『NWA75』以降のNWAの番組に登場していないことから、同大会が最後だった可能性がある。また、ストームと共に解説を務めていた元TNA女子ノックアウト王者ベルベット・スカイもNWA脱退を表明。
各王者、放送席、そして演出など、色々な面で一新した9月5日放送の『Powerrr』では、次期PPV大会として10月28日オハイオ州クリーブランドで『Samhain』が開催されることが発表された。ゲール語で『サウィン』と発音されるが、本来ハロウィーンの翌日に開催されるアイルランド人やスコットランド人などのゲール系民族の祭りの名称だ。おそらく、デスマッチが中心の大会になると思われる。
また同日、「眠っているトム・ラティマーを覚醒するためにNWAに来た」と主張し続けていた新世界ヘビー級王者EC3が、かつてWWE選手育成団体FCWやTNAでタッグパートナーだったラティマーに対し、テレビ王座を返上してヘビー級王座に挑戦するよう要請。翌週の放送でラティマーが王座を返上し『サウィン』での対戦が正式に決定した。
そのEC3は、今年夏にクリーブランドで自身の団体『エクソダス・プロレスリング』を旗揚げしたが、10月7日、『NWAエクソダス・プロ』としてNWAに加盟することが発表された。現体制のNWAでは初の加盟団体となる。時期PPV『サウィン』もエクソダスによる興行だ。
また、10月9日には東京女子プロレスの大会で辰巳リカがインターナショナル・プリンセス王座をかけて世界女子テレビ王者マックス・ザ・インペイラーとダブルタイトル戦で対決、勝利したマックスが二冠王となった。
NWA社長ビリー・コーガンは10月12日、『バステッド・オープン・ラジオ』にゲスト出演。「まだ詳細は発表できないが」と前置きをしながらも、テレビネットワークとの契約にこじ付けることができたと発表。全米でトップ20に入るネットワークとの契約で、2024年2つの番組が開始されるという。
有名ネットワークとの契約により、NWAの更なる飛躍となるのか?
EC3やケンジー・ペイジら新王者達は長期政権を築くことができるのか?
エクソダスに続く加盟団体は?
まだまだ目が離せないNWAなのである。
