今尚NWAを追う(15) – 過去の清算

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NWA世界ヘビー級王者ニック・オルディスとマネージャーのオースティン・アイドルが『ザ・オルディス・クルセード』と銘打って開始した防衛戦ツアーで、オルディスは60日間で20以上の防衛戦を行うことを発表。2月にはオルディスの祖国イギリスで7度王座を防衛し、3月3日には、2011年から2017年までNWAに加盟していたイノベート・プロ・レスリングのテネシー州キングストン大会で、同団体認定USヘビー級王者デビン・ドリスコールを相手に防衛。

3月10日には、テネシー州クラークスビルで、2010年末の登場から翌2011年6月までTNAで無敗だったクリムゾンと対戦。オルディスにとっては、かつてのライバルで友人でもある相手だ。

オルディスはクリムゾンによるパワーボムを受け、失神状態に陥ったように見せかける。友人を気遣ったクリムゾンが見せた隙を利用し、オルディスがフォール勝ち。

試合後、「あれはないだろう。」と言わんばかりに抗議するクリムゾンに対し、オルディスはチャンピオンベルトで攻撃し、テキサスクローバーホールドをかける。

すると、同大会では試合が組まれていなかったジョセファスが登場。リングに置いてあったベルトを手にする。それに気づいたオルディスは、クリムゾンへの攻撃を止めるが、ジョセファスがオルディスをベルトで攻撃するのかと思いきや、あっさりと渡すという不気味な行動に出る。そして、オルディスがリングを後にすると、ジョセファスはなんとクリムゾンに手を差し伸べる。

約2週間後、ジョセファスは『秘密』の場所にクリムゾンを誘い出し、提案を持ちかけた。

「友人だったはずのオルディスの裏切りに傷ついているのは判ってる。だが、僕は君に友情を提供しに来たんじゃない。ビジネスの話だ。」

ティム・ストームを倒し、王座挑戦権を持っているジョセファスは、一騎打ちの機会の『半分』をクリムゾンに譲り、3ウェイを提案した。そして、どちらかが王座を奪取した暁には、自動的に、もう片方に挑戦権を与えるという話だ。そして、独自の世界にクリムゾンを引き込もうとする。

「『ジョセファス王国』には友情なんて存在しないが、僕は、君の内側に『ジョセファス王国』が既に存在していると思うんだ。『王国』では、様々な形で意思の疎通ができる。本を読むこともそうだし、我々とは別の第三者を通すこともある。」

一方、世界王者オルディスは3月24日にフィラデルフィアで行われる対トミー・ドリーマー戦を控えていたが、それに先駆け、2人はシリウスXMというデジタルラジオ局の番組で舌戦を繰り広げていた。

前日の23日、ドリーマー主宰のハウス・オブ・ハードコア(HOH)のニューヨーク州ロングアイランド大会で、サモアンズの片割れアファの孫で、新日本プロレスでも活躍したワイルド・サモアンの息子、ランス・アノアイの挑戦を退け、翌日フィラデルフィアに向かい、かつてシェーン・ダグラスがNWAベルトを投げ捨てた因縁の会場でドリーマーを相手に防衛。

試合後、手を差し伸べたドリーマーに対し、オルディスは「お前と握手なんかするか!」と拒否し、オースティン・アイドルと共にリングを去った。

4月7日には、なんとROHニューオリンズ大会で、観客としてリングサイドに座り、ROH世界王者ダルトン・キャッスルに挑戦した、同じくイングランド出身のマーティ・スカルに加担するも、キャッスルが防衛成功。

そして、4月14日、NWA世界ヘビー級選手権としては、初の中国大会を迎え、同王座とは因縁深いコルト・カバナに勝利。

実際にカリフォルニアからわざわざ中国まで観戦しに行った知人によると、約1万8千席と言われる温州体育中心に、2千人程度が集まったという話だが、主催者側も最初から満員を期待していたわけではなく、大会終了後は関係者全員が満足気だったという。確かに、まだまだプロレスの人気があるとは言えない中国で、2千人も入ったのであれば、悪くはないのかもしれない。

かつてNWA世界王座の存在自体が否定された元ECWアリーナでの試合、そしてカバナ戦と、NWA世界王座の歴史に残っていた『過去の汚点』を清算しているような防衛戦が続いている。

4月29日、オルディスは、『クルセード』を開始した場所でもある、チャンピオンシップ・レスリング・フロム・ハリウッド(CWFH)のカリフォルニア州ポートワイニミ大会に登場。

「今日まで世界王者として、色々な機会を与えられた。それに対する感謝の意味も込めて、今日ここで試合が組まれてない選手の誰かが、自分との試合で5分間持つことができたら、本人が希望する日時と場所での挑戦権を与えよう。」と宣言。

早速ファルコという選手が挑戦したが32秒で敗退。続けて現れたロケットボーイ・ウィルソンもまた32秒で敗れる。

「5分どころか、合計1分くらいしか試合をしていないが?」というインタビュアーのコメントに、「お客さん達は、チャンピオンを観に来てんだよ。他に誰か俺と5分間試合できる奴いないのか? 」と、答えるオルディス。

そこで、元WWEタッグ王者、ジャスティン・ガブリエルことP・J・ブラックが、1年間の負傷欠場から復帰。

「5分間持ちこたえたら、挑戦権を与えるとか言ったよな? 俺だったら、持ちこたえるどころか、お前に勝ってみせる。」

それに対し、オルディスは、「大きな怪我をしていたのは気の毒に思うし、本当だったら控室に戻ってもらって考え直すように説得しただろう。だが、さっきの話で1つひっかかったことがある。5分間持ちこたえるだけじゃなく、俺に勝てると言ったよな? だったら、すぐこのリングに入ってきて、5分間過ぎたら、さっさと車に乗ってラスベガスに向かい、サーカスにでも雇ってもらって、本来お前にぴったりのつまらんアクロバットでもやってろ。」と返す。

結果は、オルディスが苦戦しながらも5分経過。「俺に勝つんじゃなかったのか?」と言わんばかりに、「5分過ぎても勝てなかったから、(挑戦権の)話は無しだ。」と、逃げるかのようにリングを去るオルディス。

会場の外で、CWFHのプロモーター、デビッド・マルケスによるインタビューの中で、オルディスはNWAに対する不満をぶちまける。

「ジェームス・エルスワースにしても、コルト・カバナにしても、ビリー・コーガンの陰謀だ。誰のおかげでNWAが過去の栄光を取り戻そうと思ってんだ? 今後は突然押し付けるのではなく、誰が挑戦してくるのか、15日前には伝えてこい。14日じゃない、15日だ。」

クリムゾンやジョセファス、そして今度はP・J・ブラックと、挑戦者は続出。

そして5月13日、ビリー・コーガンによる買収後のNWAにとっては、最大の発表があった。

かねてから米プロレス界で話題になっていた、バレットクラブのコーディ・ローデスとヤングバックスによる自主興行『オール・イン』が9月1日、シカゴで開催される。ケニー・オメガやマーティ・スカルも出場し、前日のサイン会では、なんとCMパンクも参加予定で、史上最大のインディ大会として期待されている。

チケット発売は現地時間13日午後4時だったが、その約30分前、コーディのNWA世界ヘビー級王座挑戦が発表された。そして、収容数1万人以上の会場だが、4時の発売からなんと29分36秒でチケットは完売。

世界王者として人気上昇中のオルディス防衛なるか。それとも史上初親子2代のNWA世界王座奪取となるか。

新生NWAはファンの注目を集め続ける。


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