今尚NWAを追う(28) – 73周年

総本山復興となるか

カテゴリー: 今尚NWAを追う , 観戦 [テレビ、オンライン]

NWAは、PPV『When Our Shadows Fall』放送2日後の2021年6月8日、8月28日から31日までの4日間にかけてPPVおよび『NWA Powerrr』収録の開催を発表。会場はなんと、ミズーリ州セントルイスのチェイス・パーク・プラザ・ホテルだ。長年NWA会長を務めたサム・マソニックのお膝元であるセントルイス地区のテレビ中継が1953年から1983年まで30年間行われた場所で、約38年ぶりに同会場にNWAが復帰することとなった。8月28日は『EmPowerr』と題した女子選手のみによるPPV。「Empower」とは、権力や権威のような力を与えるという意味で、米国において女性の権利や地位が主張される際に使われることも多い言葉だ。翌29日は、NWA73周年記念大会『NWA 73』開催となった。

6月15日放送の『NWA Powerrr』では、空位となっているナショナル王座決定トーナメント準決勝が3ウェイ式で行われ、JTGがフレッド・ロッサーとエル・ルードを破った。もう片方の準決勝は6月22日の放送で前王者クリス・アドニスがパロウと『ストリクトリー・ビジネス』のチームメートであるトム・ラティマーに勝利。決勝は7月6日の放送で行われ、JTGを破ったアドニスが王座に返り咲いた。

7月16日、『EmPowerr』プロデューサーのミッキー・ジェームスは同大会で復活NWA世界女子タッグ王座決定トーナメントの開催を発表。

またジェームスは7月17日に古巣のインパクト・レスリングに登場。現インパクト女子ノックアウト王者ディオナ・パラッツォを『EmPowerr』に招待した。8月5日、ジェームスは再度インパクトに登場し、挑戦者が元WWE世界王者メリーナに決定したと発表。

7月27日の放送からは『チャンピオンズ・シリーズ』が開催。現役王者と『レジェンド』の2人ずつがチームのキャプテンとして、自分達のチームにヒールとベビーフェース関わらず1人の補欠を含めた5人を選出、4チームが団体戦式でトーナメントで戦うという、多少複雑な方式だ。優勝したチームのメンバーは、自分のチームのキャプテン以外どの王者にも挑戦できるという。世界女子王者カミールとオースティン・アイドル、世界タッグ王者アロン・スティーブンスと元TNA女子王者タリン・テレル、世界ヘビー級王者ニック・オルディスと元WWE世界女子王者メリーナ、世界テレビ王者ザ・ポープと元TNA女子王者ベルベット・スカイがそれぞれチームキャプテンとなったが、ポープとスカイ以外は常に意見が合わないという状態が続いた。

7月24日、ノースキャロライナ州シャーロットで開催されたNWA外の大会でニック・オルディスに再度挑戦しフォール負けしたトレバー・マードックは『NWA 73』での再挑戦を表明。王座を奪取できない場合は引退すると宣言。

8月1日ミッキー・ジェームスは、AEWの8月4日の生放送でザ・バニー(チェリーボム)とレイラ・ハーシュとの間でNWA世界女子王座挑戦者決定戦が開催されることを発表。ハーシュは昨年10月22日AEWの大会で当時のNWA世界王者セレナ・ディーブに挑戦したが惜しくも敗れていた。来日経験者同士の試合ではハーシュがバニーを破り、『EmPowerr』での世界王座挑戦権を獲得した。

またジェームスは、自分の他にも元WWEおよびTNA女子王者ゲイル・キム、元WWFおよびNWA世界女子王者ジャズ、そしてかつて日本に定着し全日本女子プロレスの一員として活躍したメドゥーサら3人も『EmPowerr』のプロデューサーとして協力することを発表。当日は10人参加の時間差式バトルロイヤルが開催され、優勝者は翌日の『NWA 73』で世界女子王座に挑戦することが決定。NWAだけだはなくAEW、インパクト、メキシコのAAAと、各団体から女子選手が集結することから同大会への期待が高まっていった。

『EmPowerrr』宣伝用動画。世界タッグ王者組が、NWA発足の1948年という設定の中で、如何にプロレス界が男中心の世界かを主張。
『NWA 73』用に1968年版も作成されたが、いずれも3人の特徴が生かされた動画だ。これを見る限りでは王座防衛かと思われたが…。

8月3日、WWEリック・フレアーの解雇を発表。それを受けたNWAは、もしフレアーが、かつてNWAの総本山といわれたセントルイス大会に来場するなら『大歓迎する』という声明を出したが、多くのファンは「今のNWAにはフレアーのギャラなんて払えないだろう。」と、冷めた反応だった。だが、それにも関わらず、翌日『NWA 73』のチケットは完売となった。

8月6日にはYouTubeで『Extra Powerrr』として無料配信。タイラスがザ・ポープを破り世界テレビ王座を奪取した。

8月10日の放送では、『チャンピオンズ・シリーズ』の決勝が開催。最終的には、カミールとオースティン・アイドルのチーム、そしてザ・ポープとベルベット・スカイのチームが同点になったため、各チームの補欠同士の試合による決勝となり、コルビー・コリノがサル・リナウロを破り、ポープとスカイのチームが優勝した。これにより同チームのメンバーであるトレバー・マードック、ジェナサイド、ジャックス・デイン、ザ・ミステリーマン、コリノがそれぞれ王座挑戦権を得た(追記: 後日、引退同然のスカイにも挑戦権が与えられていると発表され、多少判り難い点もある)。 また、毎週『Powerrr』放送終了後にYouTubeでその日の放送を振り返る『ポストショー』が生配信されているが、当日はミッキー・ジェームスが、昨年コロナ禍で活動停止していたNWAを離脱したアリシン・ケイとマーティ・ベルをゲストとして招待し、生配信中に女子タッグ王座決定トーナメント出場を打診、即決定した。後日、同トーナメントにはテリー・ゴーディの娘ミランダとジミー・ヤンの娘ジャジーが『フリーベイブス』として参加することも発表された。

そして8月17日、なんとリック・フレアーの来場が正式に発表され、更に盛り上がりを見せることとなった。

8月28日、NWAとしては初の女子選手のみによるPPV『EmPowerrr』が、同団体にとっては聖地ともいえるセントルイスのチェイス・パーク・プラザ・ホテルで開催。メインイベントの時間差式バトルロイヤルでは元インパクト王者チェルシー・グリーンが優勝し、セミファイナルでレイラ・ハーシュを破り世界王座を防衛したカミールに、翌日の『NWA 73』で挑戦することが決定。尚、同バトルロイヤルには元全日本王者デビー・マレンコも出場した。

https://twitter.com/nwa/status/1427697804894429195
セミファイナル世界戦の前には、ビリー・コーガンNWA社長がリングに上がり、1930年代から1950年代にかけてミルドレッド・バークが巻いていたといわれる世界女子選手権のベルトを披露。試合に花を添えた。

個人的には、正直ここまで盛り上がるとは思ってもいなかった。今のNWAに女子タッグ王座なんか必要ないと思ってはいるが、もしこんな感じで他団体との交流が続くのであれば、十分活用できる王座となる可能性もある。元WWE王者トリッシュ・ストラタスや元UFCおよびWWEロウ王者ロンダ・ラウジー、そして8月21日に開催されたWWE『サマースラム』を突如欠場して以来沈黙を守っていたサーシャ・バンクスらを含む多くの関係者がSNSで称賛しているのを見ると、業界内でも大きな反響を呼ぶ大会だったようだ。

試合結果 (左側が勝者、最初の2試合はYouTubeで無料配信):

  • スカイ・ブルー (5:11) クリスティ・ジェインズ
  • パオラ・ブレイズ (3:58) ケンジー・ペイジ
  • 団体対抗3ウェイ戦: ディアメンテ[AEW] (8:14) カイリー・レイ[NWA]、チック・トルメンタ[AAA]
  • 世界女子タッグ王座決定トーナメント準決勝: ザ・ヘックス [アリシン・ケイ & マーティ・ベル] (6:54) レネー・ミッシェル & サハラ・セブン
  • 世界女子タッグ王座決定トーナメント準決勝: カイリン・キング & レッド・ベルベット (6:44) フリーベイブス [ミランダ・ゴーディ & ジャジー・ヤン]
  • インパクト女子ノックアウト選手権: ディオナ・パラッツォ (14:38) メリーナ
    ※ 王座防衛。
  • 世界女子タッグ王座決定トーナメント決勝: ザ・ヘックス [アリシン・ケイ & マーティ・ベル] (9:41) カイリン・キング & レッド・ベルベット
    ※ ヘックスが優勝。
  • 世界女子選手権: カミール (13:03) レイラ・ハーシュ
    ※ 王座防衛。
  • 女子招待杯10人参加時間差式バトルロイヤル決勝: チェルシー・グリーン (24:08) トゥーティ・リン
    ※ グリーンの『NWA 73』での世界王座挑戦が決定。
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また、同大会では、プロデューサーの1人として名を連ねていたゲイル・キムがリング上から挨拶をしていると、かつてTNAでキムと抗争を繰り広げたタリン・テレルがジェナサイドとパオラ・ブレイズを連れて登場。キムを挑発し、2人にキムをリングから追い出すように命令すると、これまたかつてTNAでキムのライバルだったオーサム・コング(アメージング・コング)が救出に駆け付けた。3人を追い払ったコングはマイクを握り、その場で引退を表明。

そして翌日、NWA73周年記念大会が同会場で開催。

序盤に行われた3ウェイ戦では、開始直後に、ジャックス・デインが乱入しタッグパートナーであるクリムゾンを攻撃。一旦はドレッシングルームに戻ったクリムゾンだったが、途中で再登場。だが結局ティム・ストームにフォールされる。

ナショナル王者クリス・アドニスは、昨年秋にNWAを離脱した元世界タッグ王者ジェームス・ストームを相手に防衛。同王座挑戦者決定13人参加バトルロイヤルでは、以前TNAでマーフィーとして活躍したマイケル・ジューダスがジュダイスの名で、悪役マネージャーで有名なジェームズ・ミッチェルと共に入場し、優勝した。

セミファイナルではラ・レベリオン (ベスティア666 & メカ・ウルフ)が、コナンと共に登場。世界タッグ王座を奪取した。

世界ヘビー級王者ニック・オルディスに挑戦するトレバー・マードックは、師匠ハーリー・レイスと同じ色のジャケットを着て入場。オルディスを破り1044日におよぶ長期政権に終止符を打った。

📷: T-Bone

試合結果 (左側が勝者、最初の2試合はYouTubeで無料配信):

  • アリシン・ケイ & マーティ・ベル & レディ・フロスト (5:07) ジェナサイド & パオラ・ブレイズ & タリン・(5:07)
  • P・J・ホークス (6:57) コルビー・コリノ
  • 3ウェイ戦(反則負けなし): ティム・ストーム (9:10) トム・ラティマー、クリムゾン
  • ミッキー・ジェームス (5:34) カイリー・レイ
  • タイラス & シオン・ザ・ミステリーマン & ジョーダン・クリアウォーター (12:52) ザ・ポープ & ジ・エンド [オディンソン & パロウ]
  • ナショナル選手権: クリス・アドニス (14:03) ジェームス・ストーム
    ※ 王座防衛。
  • ナショナル王座挑戦者決定13人参加バトルロイヤル: ジュダイス優勝 (20:08)
  • 世界女子選手権: カミール (12:33) チェルシー・グリーン
    ※ 王座防衛。
  • 世界タッグ選手権: ラ・レベリオン [ベスティア666 & メカ・ウルフ] (14:04) アロン・スティーブンス & クレイトス
    ※ 王座移動。
  • 世界ヘビー級選手権: トレバー・マードック (16:25) ニック・オルディス
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バトルロイヤルの前にリングに上がり15分以上喋り続けたリック・フレアーが、メインイベント終了後に再びリングに戻り新王者を称えた。
「初めて会った時に言ったよな。『マードックというリングネームを使うからには、下手なことはできないぞ。』って。今夜君はハーリー・レイスの色で入場し、ハーリー・レイスを『代表』して王座を勝ち取った。世界王者というのは手本を示さないとならないが、君たち2人は素晴らしい試合を見せてくれた。おめでとう。」

新王者トレバー・マードックは、試合後リック・フレアーが再びリングに戻って来ることを全く聞かされて無かったという。

翌日『Powerrr』の収録も引き続きチェイスで開催された。8月31日の放送では、世界ヘビー級王座を失ったニック・オルディスが『休息』のため欠場。新世界タッグ王者組ラ・レベリオンは、NWAが相応しい挑戦者を用意するまで、王座をメキシコに持ち帰ると宣言。また、ナショナル王者クリス・アドニスは、メリーナを帯同してインタビューに登場した。

9月7日の放送では、世界タッグ王座挑戦者決定トーナメントが開始。準々決勝でジ・エンド(オディンソン & パロウ)がジョーダン・クリアウォーター & サイオンを、サル・リナウロ & ミムスがスライス・ブギ & マルシェ・ロケットをそれぞれ破り準決勝に進出。また、ジェナサイドとパオラ・ブレイズが世界女子王座を奪取したばかりのアリシン・ケイ & マーティ・ベルに挑戦を表明。

番組の最後には、ニック・オルディスが、自らが結成したユニット『ストリクトリー・ビジネス』のクリス・アドニス、トム・ラティマー、カミールと共に登場。インタビューは一部トレバー・マードックを称賛するような内容だったが、再挑戦を表明した。「必ず再び真の世界王者になってやる。勝ち続けることが『家業』だからだ。」と語ったオルディスをアップで映していたカメラがズームアウトすると、隣にはミッキー・ジェームスの姿があった。そのまま夫婦で退場すると、『ストリクトリー・ビジネス』の面々も戸惑いながら会場を後にした。

https://twitter.com/nwa/status/1435378294627708929

オルディス夫婦と『ストリクトリー・ビジネス』の関係は?

マードックの初防衛戦の相手は?

世界タッグ王座挑戦権を勝ち取るのは?

今後の『Powerrr』収録はセントルイスか、それともアトランタか?

連日のPPV成功で得た勢いを保ち続けれるのか?

まだまだ目が離せないNWAなのである。


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