クリス・ベノワ (1967 – 2007)

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月曜の夜は、涙が出そうだがショックが大き過ぎて出てこないくらいの放心状態だった。

カート・アングルやトリプルHの様にファンに対して失礼な態度をとると言われている連中や、リック・フレアーショーン・マイケルズみたいに舞台裏の政治的な手段で多くのレスラー達から非難を浴び続けてきたのとは違い、誰かが彼のことを悪くいうのを聞いたことがなかったし、こどものことを崇拝するかの様に可愛がってたことで有名だった。その分、翌朝警察が発表した死因を読んだ時は疑ってしまった。

所詮テレビに出てる人間だ。プライベートなことなんて判らんし、興味もない。妻と息子を殺し、自分は首を吊るという、悲惨な最期だったらしいけど、実際に彼らがどんな境遇に立たされてこうなってしまったのか、警察が見つけられる物理的な情報以上に色々あるだろうし、今となっては誰にもわからない。今回の事件で、一番苦しかったのは彼自信かもしれないし、そんな苦しみも神にしか理解できないのかも。決して正当化できる行動ではないけど、心に重病があったかもしれない人間に対して「お前は悪い奴だ」と簡単に裁くことも自分にはできない。

というわけで、ここでは彼の死よりも、プロレスラーとしての人生について。

アメリカで活躍する現役のレスラーで、一番好きなのがリック・フレアーと、このクリス・ベノワだった。

ハート兄弟の父親でカナダのカルガリーのプロモーター、スチュ・ハートに入門後、1985年11月にカルガリーでデビュー。その後、なんと新日本プロレスに『留学』し、道場に住み込み修行。テレビの中継で、他の若手達や一緒に留学していたダリル・ピーターソン(=マックス・ペイン)と共にリングの周りをうろちょろしてたのを憶えている。

その直後に自分は留学のため渡米したんで、数年後に獣神サンダー・ライガーのライバルとして来日していた覆面レスラー、ペガサス・キッドの正体がばれるまで、彼の名前を聞くことが無かった。

とはいえ、その頃は日本からの試合のビデオを見る機会が多く、ベノワも好きなレスラーの一人になった。ピーターソンやブライアン・アダムスらの様な同時期に新日本で修行した他の外国人選手達よりも、しっかりと新日ファン好みの試合をしていたので、尚更思い入れも大きかった。

90年には宿敵ライガーを倒しIWGPジュニア・ヘビー級王座を獲得。

94年には、団体の枠を超えて行なわれたジュニアヘビー級のトーナメント『Super J-Cup 1st Stage』が開催され、日本のジュニアヘビー級のパイオニアである藤波辰爾が1978年1月にニューヨークで奪取したWWWFジュニアヘビー級選手権のベルトを優勝者に贈呈。藤波がベノワの腰にあのベルトを巻いた時、自分は彼を一人の外国人レスラーとして見てたのではなく、「『新日本出身』のこいつが相応しい。」と思った。

その後フィラデルフィアのECWが日本のスタイルの試合を売り出し始めた頃にアメリカでも活躍し始め、WCWではフォーホースメンのメンバーとして活躍し、2000年にWWF(現WWE)へ移籍。その後も、日本仕込みのスタイルで活躍していた。

2004年3月14日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで、念願の世界ヘビー級王座を奪取。試合後には同日別の試合でWWEヘビー級選手権を防衛した故エディ・ゲレロが共にリング上に立ち、勝利を称えあう。新日本で活躍中に親友になった二人による名場面だった。エディが生きてたら、こんな大惨事になる前に相談できてたのかも知れないが…。

他の選手達の様にマイクを握ってベラベラ喋ってお決まりのキャッチフレーズでウケてるわけでもなく、試合とは関係ないリング上や舞台裏での茶番の中心になってたわけでもない。それでも会場では彼が入場する度に大歓声で、試合だけで人気を得ていた数少ない選手の一人だった。

そう思うと、新日本や全日本のトップに立って、武藤敬司蝶野正洋のような、かつて『闘魂三銃士』と言われていたにも関わらずテレビカメラに向かって怒鳴りまくったり試合中にオーバーなジェスチャーばかりしてる連中よりも、よっぽど昔の新日本っぽいスタイルを見せてくれていた様な気がする。

自分にとって、ベノワの存在が、茶番ばかりのアメリカのプロレスを見続ける理由になってたことは事実。今は彼のプロレス界での偉業に感謝すると同時に、彼と家族の魂を神様に委ねたい。

“クリス・ベノワ (1967 – 2007)” への1件の返信

  1. クリス・ベノワ亡くなったの?
    しかも、自殺?
    ・・・絶句だね。

    なんだか俺もショックだよ。

    プロレスに対する真直ぐな姿勢、それを感じるレスラーだったので、俺も好きでした。

    ただ、一種の暗さを持っているのも感じてはいたんだけど・・・。

    とにかく悲しいね。

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