今尚NWAを追う(31) – 『Alwayz Ready』

大会名とは裏腹に…

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NWAは2022年4月19日、次回PPV『Alwayz Ready』が6月11日テネシー州ノックスビルで開催されることを発表。かつてナッシュビルのニック・グラスとロイ・ウェルチの下でジョージとジョンのカザナ兄弟が同地区を担当し、1974年に興行権を買い取ったウェルチの孫ロン・フラーが会員プロモーターだけではなく選手としても活躍し、NWAとは縁の深い同地だが、現体制では初めての大会となる。『Alwayz Ready』とは、「常に準備ができている」という意味で、世界ヘビー級王者マット・カルドナがシャツのデザインなどにも使用しているキャッチフレーズ。大会の名称だけではなくロゴもカルドナがグッズに使用しているもので、まるでカルドナ自身をテーマにしたかのような演出だ。

https://twitter.com/nwa/status/1518622239150821378

4月26日放送分の『NWA Powerrr』では、クロケット・カップ2022優勝者組であるジェイとマークのブリスコ兄弟が、ラ・レベリオン(ベスティア666 & メカ・ウルフ)の保持する世界タッグ王座に挑戦するが、惜しくも敗れ、ROHおよびインパクト・レスリングに続く世界王座奪取とはならなかった。

同じく4月26日の放送では、世界タッグ王座に加え、王者ホミサイドにレット・タイタスが挑戦する世界ジュニアヘビー級選手権試合も行われた。

4月30日にはケンタッキー州オークグローブでTNTとの合同興行『Powerrr Trip 2』が開催。『NWA Powerrr』3回分、『NWA USA』2回分の収録が行われた。ホミサイドはコルビー・コリノを破り世界ジュニア・ヘビー級王座を防衛。前世界ヘビー級王者トレバー・マードックはカルドナ軍団の一員マイク・ノックスを一蹴。ニック・オルディスはカルドナの長年のタッグパートナー、ブライアン・マイヤースを倒した。

世界ジュニアヘビー級選手権: ホミサイド vs コルビー・コリノ

5月11日、『Alwayz Ready』のメインイベントとして世界ヘビー級王者マット・カルドナとニック・オルディスの再戦が組まれたことが発表されるが、カルドナは凶器ありのデスマッチ、オルディスは金網デスマッチを要求した。また、ラ・レベリオンの保持する世界タッグ王座には、クロケット・カップ準決勝で王者組に勝利したコモンウェルス・コネクション(ダグ・ウィリアムス & ハリー・スミス)が挑戦。世界ジュニアヘビー級王者ホミサイドとクロケット・カップで大活躍を見せたP・J・ホークスの対戦も決定した。

この時点でNWA王座以外にも幾つかの王座を保持していたカルドナはインディ界の引っ張りだこで、地元ニューヨーク州ロングアイランドの複数の団体や、インパクト・レスリング、オハイオ州のAIWなどにも参戦し、多忙な日々が続いていた。そんな中、5月28日に事件は起こった。

ネバダ州ラスベガスで開催された『ザ・レスリング・リボルバー』という団体の興行で、リッチ・スワンに敗れインパクト・デジタルメディア王座を明け渡す。そのまま同会場で行われたGCWの大会にも出場し同日2試合目となったが、ブレイク・クリスチャンとの試合中に上腕二頭筋を負傷してしまう。オルディス戦を4日後に控えた6月7日、手術をする羽目となった。

https://twitter.com/TheMattCardona/status/1534311085595041794

6月11日、カルドナとオルディスの試合のルールも発表されず、世界王者負傷のまま迎えた『Alwayz Ready』。当初カルドナをテーマとした大会になると予想されていたが、『準備万全』どころか、医者から全治3~5ヶ月と告げられ、当然のことながら試合をできる状態ではなかった。

YouTubeで無料配信されたプリショーが終りPPVの本放送が始まると、早速第一試合から前世界ヘビー級王者トレバー・マードックが登場し、同試合での引退を発表したアロン・スティーブンスを破る。

解説席にはゲストとしてブリー・レイ(ババ・レイ・ダッドリー)が着き、セミファイナルでは世界女子王座をかけて対戦する2人の教え子達を見守った。試合後にはかつてノックスビルを中心としたNWA南東部地区で活躍したトム・プリチャードがリング上から挨拶。

メインイベントの時間になると、カルドナ軍団全員がリングに上がり、手術から僅か4日しか経過していない王者マット・カルドナがマイクを握る。「今夜は俺の大会で、このベルトも俺のものだ。この王座をどうするかは俺が決める。」と叫ぶ。するとビリー・コーガンNWA社長が現れ、カルドナにベルトを明け渡すように促す。

そして挑戦者として予定されていたニック・オルディスも登場。カルドナに対して「色んな団体に顔を出して、隙あらばトップの座をもぎ取ろうとする典型的な元WWEの寄生虫」と扱き下ろし、コーガンに対して「お前がこのベルトをどうしようと、知ったこっちゃない。」と告げると、「今夜は予定通りちゃんと試合をして、ここに集まったみんなを満足させて帰ってもらうのが俺の役目だ。」と主張。すると、まるで対戦相手に名乗り出るかのように、既に試合を終わらせていたトレバー・マードックが現れリングに上がる。

続いて、世界女子王座を防衛したばかりのカミールと共にトム・ラティマーも入場し、コーガンに対して、「これまで(インパクトに続き)2団体でお前の下で働いてきたが、一度もチャンスをくれなかったじゃないか。」と詰め寄る。

その時サム・ショーが登場。デクスター・ルミスの名でNXTで活躍していたが、4月末にWWEから解雇されて以来、プロレス会場に現れるのは今回が初試合だ。多分。(笑)

リング上で引き続きカルドナにベルトを明け渡すよう頼み続けるコーガンに対して、カルドナは「お前のことを信用しているからな。」と一言告げ、ベルトにキスをして返上した。即、リングに集まって選手達による王座決定4ウェイ戦が行われ、最後はオルディスをフォールしたマードックが王座に返り咲いた。

試合結果 (左側が勝者):

  • ロドニー・マック (5:16) ジェーク・ドゥマス
  • 3ウェイ戦: リッキー・モートン & ケリー・モートン (6:58) イル・ビーガッテン [ジェレマイア・プランケット & アレックス・テイラー]、カントリー・ジェントルマン [A・J・カザナ & アンソニー・アンドリュース]
  • トレバー・マードック (4:38) アロン・スティーブンス [引退試合?]
  • 世界女子タッグ選手権: プリティ・エンパワード [ケンジー・ペイジ & エラ・エンビー] (8:35) ザ・ヘックス [アリシン・ケイ & マーティ・ベル]
    ※ 王座移動。
  • 世界ジュニアヘビー級選手権: ホミサイド (10:50) P・J・ホークス
    ※ 王座防衛。試合後、コルビー・コリノが現れ、ホミサイドに挑戦。
  • 世界ジュニアヘビー級選手権: ホミサイド (9:06) コルビー・コリノ
    ※ 王座防衛。
  • ナタリア・マルコバ (8:43) タヤ・ヴァルキリー
  • ナショナル・ヘビー級選手権: ジャックス・デイン (10:19) クリス・アドニス
    ※ 王座防衛。
  • トム・ラティマー (12:30) サイオン
  • 世界テレビ選手権: タイラス (8:37) ミムス
  • 世界タッグ選手権: コモンウェルス・コネクション [ダグ・ウィリアムス & ハリー・スミス] (13:54) ラ・レベリオン [メカ・ウルフ & ベスティア666]
    ※ 王座移動。
  • 世界女子選手権: カミール (17:06) カイリン・キング
    ※ 王座防衛。
  • 世界ヘビー級王座決定4ウェイ戦: トレバー・マードック (18:10) ニック・オルディス、トム・ラティマー、サム・ショー
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また、当日はNWAの74周年記念大会の開催も発表。8月27日・28日の2連戦で、昨年に続き会場はミズーリ州セントルイスのチェイス・パーク・プラザ・ホテル。長年NWA会長を務めたサム・マソニックのお膝元であるセントルイス地区のテレビ中継が1953年から1983年まで30年間行われた場所だ。

6月14日放送の『NWA Powerrr』では、一度は仲間割れをしたトム・ラティマーとクリス・アドニスの『ストリクトリー・ビジネス』が再結成し、カルドナ軍団(マイク・ノックス & VsK)を破った。

『NWA Powerrr』6月28日
マット・カルドナが登場し、トレバー・マードックに対して、「そのベルト、俺が必ず奪い返すから、夏の間、しっかり温めておけ。」と挑発。
新世界タッグ王者組コモンウェルス・コネクションと前王者組ラ・レベリオンの再戦が組まれ、王者組が防衛となった。
7月2日放送の『NWA USA』では、プリティ・エンパワードが前王者組ザ・ヘックスを相手に世界女子タッグ王座を初防衛するが、レフリーの隙を見てベルトでマーティ・ベルを攻撃したエラ・エンビーと、正当な試合をしたいケンジー・ペイジとの間の不穏な空気が漂った。

7月5日放送分では、ビリー・コーガンNWA社長が『Race to the Chase』と題して世界ヘビー級王座挑戦者決定トーナメント開催を発表。7人参加で、マイク・ノックスは不戦勝で4ウェイ決勝からの出場となる。7月12日の放送では早速1回戦3試合が行われ、トム・ラティマーがタッグパートナーのクリス・アドニス、ブライアン・マイヤースはザ・ポープをそれぞれ破り決勝進出。ニック・オルディスとティム・ストームの元世界ヘビー級王者同士の対戦は、最初クリーンな試合運びとなっていたが、張り手を繰り返すオルディスにストームが激怒し、思わず急所蹴りを見舞ったところ、反則負けを取られた。試合後、倒れたまま急所を押さえるオルディスは反則勝ちが宣言されると不気味にほほ笑んだ。

今や各地のインディ団体でNWA世界女子王者として活躍するカミールは、ブッカーTがテキサス州ヒューストン郊外で運営するリアリティ・オブ・レスリング(ROW)の7月16日配信の試合でもジージー・レイを相手に防衛。

今年のセントルイス大会は、女子選手のみの大会『EmPowerrr』で盛り上がった昨年とは違い、74周年大会が2日に亘って行われることとなっており、どんな目玉を用意しているのか気になっているファンは多かったはず。そんな中、NWAは7月19日、74周年大会におけるUSタッグ王座決定戦の開催を発表。それも10組参加バトルロイヤルだという。

そして同じく7月19日の『NWA Powerrr』では、前世界タッグ王者組ラ・レベリオンのセコンドとして、なんとダミアン666が登場。OGK(マイク・ベネット & マット・ターバン)との対戦では4者が入り乱れ、レフリーがゴングを要請。両組反則かノーコンテストかは発表がなかったが、試合後ダミアンがリングに上がり、ベネットに急所蹴り、ターバンに毒霧攻撃など、やりたい放題。現体制のNWAになって以来、これまで世界タッグ王座を失ったチームは全て解散しているかNWAを離脱してるが、新しく仲間を迎えたラ・レベリオンは継続参加となりそうだ。

メインイベントは4ウェイ戦による『Race to the Chase』決勝。序盤はカルドナ軍団のブライアン・マイヤースとマイク・ノックスが共闘しトム・ラティマーを攻撃。途中ニック・オルディスとラティマーの元ストリクトリー・ビジネスのメンバーによる協力体制も見られたが、最後はノックスの技をかわしてマイヤースとの同士討ちに成功したオルディスが、ラティマーをノックスに衝突させ、そのままマイヤースをフォール、世界ヘビー級王者トレバー・マードックに対する挑戦権をもぎ取った。

2年連続のトレバー・マードック対ニック・オルディスが決定し、当然ファンの間では賛否両論あるようだが、74周年大会まではまだ1ヶ月以上あり、更なる展開も予想される。個人的にも、もう一捻り二捻り欲しいところだ。

8月下旬には復帰の可能性もあり、既に来場が決定している前世界ヘビー級王者マット・カルドナはどう絡んでくるのか?

仲間割れ寸前となっている世界女子タッグ王者組エラ・エンビーとカイリン・キングの今後は?

復活USタッグ王座に君臨するのはどのチームか?

それ以前に、ただでさえPPV大会の大部分が選手権試合になりかけている今、本当に王座を新設する必要があるのか? (笑)

まだまだ目が離せないNWAなのである。


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