今尚NWAを追う(38) – 只今迷走中

追悼 ~ ジャックス・デイン

カテゴリー: 今尚NWAを追う , 人物

前回記事時点での王者一覧:

世界ヘビー級: EC3
世界ジュニアヘビー級: コルビー・コリノ
世界女子: ケンジー・ペイジ
世界タッグ: ブラント・フォール・トラウマ
世界女子タッグ: エラ・エンビー & カイリー・ペイジ
世界テレビ: ミムス
世界女子テレビ: マックス・ザ・インペイラー
ナショナル・ヘビー級: サイラス・メイソン
USタッグ: タロス & デイジー・キル

色々あって一年近く投稿せずに時間が経ってしまった。

その間NWAには多くの変化があったのだが、必ずしも心がワクワクするようなものではなく、今後が不安になることの方が多いうえ、こういうブログを続けるには難しいくらいの混乱が続いている。

まずは、『NWA Powerrr』配信方法の著しい変化だろう。

2023年10月、NWAはCWテレビジョン・ネットワークと契約、2024年2月からPowerrrが放送されることを発表するが、蓋を開けてみると、CW系列のテレビ局での放送ではなく、ウェブサイトやアプリ上での配信だった。これまでYouTubeやFiteで配信されていたため世界中で視聴可能だったが、アメリカ国内のテレビ局のアプリのため国内限定の配信となり、国外のファンはVPNなどを使用しない限り視聴不可能となった。

また、それまで毎年PPVとして開催されていた全ての主要大会が、PPVではなく数回に分割され、通常のPowerrrとして配信されるようになったため、試合結果などの最新情報の入手や把握が困難となったのが、この『今尚NWAを追う』シリーズの更新が難しくなった大きな理由の一つ。実際に配信されるのが大会収録から3、4ヶ月後というのも珍しくなくなった。

当初から同じくCWに10月の移行が決定していたNXTとの競合について指摘されていたが、実際9月末になるとNWAからの特に発表もなく突如CWでの配信が中止となり、それまで配信済みだった数ヶ月分のPowerrrも全て削除された。これまでも配信元が変更する度に、過去回が全て見れなくなっており本当に勿体ない話だと思う。

NWAはYouTubeへの復帰ではなく、旧Twitter『X』での毎週の配信を開始。これによって再び国外からの視聴可能とはなったが、Xのみだと不便だという声も多い。スマートフォンやタブレットではなく、あくまでテレビの大画面で観たいというファンが多く、必ずしもテレビがXからのキャスティングに対応しているとは限らないからだ。また、相変わらずPPVのような特別番組の生配信があるわけではないので、王座の移動が配信または発表されてないまま会場では新王者が防衛戦をするということもあった。

例えば、Xでは初回から2024年8月31日にペンシルバニア州フィラデルフィアの2300アリーナ(旧ECWアリーナ)で開催されたNWA76周年記念大会が何度かに分けて配信されたが、6月1日にテネシー州ノックスビルでトレバー・マードック & マイク・ノックスがブラント・フォース・トラウマから世界タッグ王座を奪取したことが発表されていないにも関わらずフィラデルフィアでは王座を防衛した。また同大会ではトーマス・ラティマーが世界王座に挑戦するためナショナル王座を返上し、見事EC3を破り奪取したが、さすがにこれは各プロレス情報サイトがXでの配信を待たずに報じた。

度重なる配信方法の変更によりファンが減少した可能性も大きいのだが、その間NWAは加盟団体を増やしていった。

  • エクソダス・プロレスリング (オハイオ州クリーブランド 2023年10月加盟)
    前世界ヘビー級王者EC3が運営。
    ジョー・カザナ・プロモーションズ (テネシー州ノックスビル 2023年12月)
    1974年までに兄ジョージと共に同地区で興行を手掛けていたジョン・カザナの孫ジョーによる団体。
  • NWAシカゴ (イリノイ州 2024年2月)
    フロリダ州のFTWと共同運営だが、NWA社長ビリー・コーガンのお膝元なのに何故わざわざ加盟団体にするか不明。
  • クロス・ファイヤー・レスリング (テネシー州セビアービル 2024年4月)
    世界女子王者ケンジー・ペイジが妹のカイリーと共に運営。
  • WLW ワールド・リーグ・レスリング (ミズーリ州トロイ 2024年11月)
    ハーリー・レイスが設立。
  • ドッグ・パウンド・チャンピオンシップ・レスリング (テキサス州サンアントニオ 2024年11月)
    元世界タッグ王者ロドニー・マックと元世界女子王者ジャズの夫婦が運営する『ドッグ・パウンド・ドージョー』による団体。
  • テキサス・スタイル・レスリング (テキサス州ダラス 2024年12月)

中西部の団体が幾つかあり、テネシー州内に2団体あるということからか、NWAは2024年6月、ミッドアメリカ・ヘビー級王座決定戦も開催。ジェレミア・プランケットが4ウェイ戦に勝利した。ベルトはかつてテネシー地区で認定されていたミッドアメリカ王座と同じデザインだ。

2024年クリスマス、NWAだけではなく米プロレス界全体に悲報が訪れた。11月に心臓発作を起こしていた元世界ヘビー級王者ジャックス・デイン(本名ジェレミー・レイモン)が12月25日、48歳の若さで他界。ブルース・サープ時代のNWAではナショナル・ヘビー級北米ヘビー級、2013年11月には大阪で世界タッグ、そして2015年8月にはサンアントニオで天山広吉を世界ヘビー級王座も奪取。2016年には一度NWAを離れ、ROHインパクト・レスリング、OVWなどにも参戦。2020年2月にNWA復帰を果たし、約2年後の2022年3月には二度目のナショナル王座栄冠を果たした。

結局自分がデインの試合を生で観ることができたのは一度だけだった。

『ゴジラ』の異名で迫力も風格も備えた選手だったが、その一方で控室などでは後輩の選手達にも笑顔で親切にアドバイスをするなど信頼される存在だったという。現所属選手達はもちろん元世界ヘビー級王者のアダム・ピアース (現WWEロウGM)やニック・オルディス(現WWEスマックダウンGM)、トミー・ドリーマーやブルー・ミーニーら元ECW勢、そしてマイケル・エルガンや藤原ライオンといった日本で活躍する選手を含む多くの関係者がSNS上で追悼の辞を述べた。

少しずつ加盟団体も増えPowerrr収録以外でもNWA所属選手の活躍の場が増えたとはいえ、PPVの廃止、そして番組収録の開催と配信日の時系列が合わないなど、全体的な流れが以前より更に判り難くなり、本格的な迷走や混乱が続いているような気もする。

ちゃんとしたブッカーを雇った方がいいという声も多いのは今に始まったことではないが、現在のNWAは実質的にビリー・コーガンの私物みたいなものなので、これ以上は期待できないのかもしれない。

今やなんとなく義務的にNWAを追い続けている自分がいるわけである。

2024年12月24日配信時点の王者一覧:

世界ヘビー級: トム・ラティマー
世界ジュニアヘビー級: アレックス・テイラー
世界女子: ケンジー・ペイジ
世界タッグ: トレバー・マードック & マイク・ノックス
世界女子タッグ: エラ・エンビー & サマンサ・スター
世界テレビ: カーソン・ドレイク
世界女子テレビ: ビッグ・ママ
ナショナル・ヘビー級: ミムス
USタッグ: A・J・カザナ & K・C・カザナ


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