Wrestling-Titles.comについて

サイトを始めた経緯を説明してみようかと。

カテゴリー: プロレス史一般

自分がプロレスを観るようになったのは、小学4年生の時の夏。初めて新日本プロレスの中継を観て即はまってしまった。『ビッグレスラー』のような雑誌や小学館の『プロレス入門』などの本は勿論、雑誌の付録でプロレス関連のものまで、色々夢中になって集めた。

ある日、何かの付録だったか、選手名鑑のようなものがあったので、じっくり目を通していた。そして、あることに気が付いた。

全日本プロレスの外国人選手欄に、ハーリー・レイスが元NWA世界ヘビー級王者、ニック・ボックウィンケルがAWA世界ヘビー級王者として載っていたこと。新日本の方には、ボブ・バックランドがWWFヘビー級王者となっている。後に、弟が持ってた『がんばれ元気』で、ボクシングにもWBCWBAってのがあるのを知ったが、小学生だった自分は、単純に、「なぜ『世界』チャンピオンが複数いるんだろう…」と疑問に思った。

その後も、プロレスの選手権について更に色んな疑問が出てきたので、中学1年の時だったか、ついに、ガキの分際で東京スポーツに電話して、「アメリカには、どんなプロレスのタイトルがあるんですか?」などという、とんでもない質問をしてしまった。さすがに全てを答えてくれるわけはなかったが、幸い、電話に出てくれた方が、「アメリカは、各州ごとに団体がありまして、それぞれがヘビー級とかタッグとかのタイトルを認定しているんで、とても多いんですよ。」みたいな感じで結構親切に答えて下さり、その中の幾つかのタイトル名と当時のチャンピオンを教えてくださった。

そして中2の時、ある1冊の本に巡り会う。自分の記憶では中1だったんだが、発売月を見ると中2だったらしい。

豆たぬきの本シリーズの太田優著、『プロレススーパータイトル戦』という、シリーズ名どおり小さな本だ。

日本の主要王座やリーグ戦、NWA、AWA、WWFの三大ヘビー級王座は勿論、UWA(メキシコ)やWWA(ロサンゼルス)、そしてWWFインターコンチネンタル、ミズーリ州、更にはAWAやWWFのタッグ王座まで、色々な選手権の歴史が載っていた。主要王座については、それまでも雑誌の記事などで時々目にしてたが、まとめて載ってる本というのは、自分にとって初めてだった。その後の自分自身の研究量が半端じゃないので、さすがに最近は開くことがないが、渡米30年以上経った今でも我が家の本棚に置いてある。

Wrestling Title Histories1990年代初期、テキサスで大学生だった自分は、インターネットのニュースグループで、プロレス史研究家のゲリー・ウィル氏と出会う。彼はその頃すでにロイヤル・ダンカン氏と共に、有名な『Wrestling Title Histories』を出版していた。その頃自分も Puroresu Dojo (その頃はまだ大学からもらった学生用アカウント上のウェブページだったが…)の中で選手権変遷史を載せ始めていたが、ウィル氏の許可により、『Wrestling Title Histories』の内容を自分のページに載せることができた。Puroresu Dojoはその後puroresu.comというドメインに移すが、その中でも更に選手権変遷史の情報量が増えたため、2000年にWrestling-Titles.comを新しく立ち上げた。いずれにせよ、今でもその本に載っている選手権の数は、自分のサイトに載ってる数には比べ物にならないくらい多い。英語圏の国であれば、どこの図書館にも置くべき本だと思うのだが、残念なことに、既に絶版。

ところで、当初はWrestling-Titles.comに日本語の情報を載せる気は全くなかった。先月も書いたとおり、元々極力『裏事情』について触れずに、スポーツ的な観点で情報提供をしたいという気持ちがあったのだが、アメリカのプロレス史を調べれば調べるほど、それはほぼ不可能だったわけで、「夢を壊す」ようなことを、わざわざ日本語で載せる必要もないと思っていた。

だが、日本語の本やサイトを見ると、間違った情報が多いことを実感した。そこで数年後、思い切って日本語の情報も載せることにした。それには、2つの大きな理由があった。

1つは、相変わらず、フランク・ゴッチを初代王者、フレッド・ビールを第2代王者とした世界ヘビー級選手権史が多いということ。実際には、初代はゲオルグ・ハッケンシュミット(英語圏や日本ではジョージ)、第2代がゴッチで、ビールは同王座を奪取していない。ビールはゴッチから米国王座を奪取したが、その後ゴッチが奪回、ハッケンシュミットに挑戦した。そもそも、NWA(アライアンス)が、『公式』記録としてゴッチを初代王者とした歴代王者一覧を発表したのが原因だが、直接つながりのない昔の王座も含めて『第何代』などと数えるのも無理がある話だと思う。Wrestling-Titles.comを見て下さってる方々は承知の事実だとは思うが、今尚続いているNWAの初代世界ヘビー級王者は、第二次世界大戦後に認定されたオービル・ブラウン以外の何者でもない。

もう1つは、2005年頃、ある日本のプロレス誌に載っていた歴代NWA世界ジュニアヘビー級王者の一覧が、正直、かなりでたらめに思えたということ。

タイガーマスク(4代目)が、かつて初代タイガーが保持していたベルトを奪取したいというコメントをした頃の記事だったが、ザ・コブラが返上してからの情報が全て省かれ、その次に載っていたのはテネシーで「トーナメントに優勝」したブラックタイガーだった。実際には、同王座はそれ以前から続いていて、事実、ベルトこそは違ったが、新日本プロレスにおいても、8冠統一トーナメントに茂木正淑が王者として出場。その後、1997年11月に大谷晋二郎が返上してからも、1999年3月に米国で王座決定戦が行われた。また、ブラックタイガーはトーナメントに優勝したのではなく、ナッシュビル郊外のコロンビアでジェイソン・ランブルから奪取し、ベルトも当時アメリカで使われていたもので、初代タイガーが保持していたものと違っていた。その試合を主催していた『NWAメインイベント』のサイトにも映像が載っていた。

ちなみに、数年前、当時のブラックタイガーの正体だった選手と会う機会があったので、念のため、テネシーで試合したのは本人かどうか尋ねてみたところ、実際そうだったという返事だった。

他にも幾つか理由があったような気もするが、基本的に、昔日本の雑誌に載っていたまま研究し直してないような変遷史を見かけることがしばしばあったので、できるだけ正確なものを提供したいと思い、日本語の情報も、英語側のほんの一部に過ぎないが、追加することにした。

話を元に戻すと、太田氏やウィル、ダンカンの両氏が出版した本は、自分の人生を変えた存在のようなものかもしれない。最近でこそ、オンラインの新聞サービスで昔の記事を検索しやすくなったが、それ以外にも、これまで多数の方々が情報を提供してくださり、本当に感謝しきれない。

プロレス大国アメリカにおいても、スポーツとして記録されてきたボクシングとは違い、プロレスはサーカスのような扱いをされることが多かった。アメリカには、過去の殆どの国内記録を保存している日本のプロレスマスコミのようなものはない。だからこそ、パズルのピースを探して組み合わせていくかのような、プロレス史研究の面白さがあるんだと思う。


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